第1話 僕はボギンス
「とう!」
「がはッ!!」
ボギンスは、最高の朝を迎えた。
「お父さん!おはようございます!朝だよ!」
ボギンスの上で跳ね回っているのは、ボギンスの娘のマミルだ。マミルは、お父さんのボギンスの贔屓目を抜いてもぶっちぎりで世界で一番可愛い(と思う)。目は母親に似て目尻が少し下がり笑顔が映える。そして、笑うと覗く犬歯と小さく生える頭のツが可愛らしさを倍増している。
「…おはよう…お父さんは、今日は休みなんだ…」
マミルは、ボギンスの言葉を聞いた後、ゴソゴソとボギンスの布団の中に入ってきた。
「じゃあ、ルーもお父さんとお休みするぅ、うんしょ、うんしょ、よし!」
マミルは、ボギンスの筋肉質な腕を頑張って引っ張り、そのまま腕を枕にした。
「フッフッフー!」
ボギンスはマミルの振りまかれる笑顔を眺めた後、マミルの枕になっている腕でマミルの頭を撫でた。
「お父さん…ルーの頭がゴリゴリするよ〜、フフフ…」
そう言った後、すぐにマミルの小さな寝息が聞こえ始めた。
「スー、スー…」
やはり、最高の朝だった。
ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ…
床が軋む音が近づいてくる。その音は、ボギンスの部屋の前まで近づいて入口の前で止んだ。
「マミル!お父さん!朝ごはんだよ!」
そう言って、マミルが開けっ放しだったドアの前で、両手を腰に当て口を少し尖らせているのは、マミルの姉のマミラだった。もちろん、マミラもぶっちぎり世界一可愛い。
「あ!マミル!…お父さん、入るよ」
マミラは、お父さんのボギンスの部屋に入る前にしっかり確認してから入ってきた。
「またお父さんと寝てる!お父さんもしっかり叱ってあげてよ」
「あ!」
マミルは、目を覚ましマミラに気づくと布団を被った。
「マミル、ご飯だって、食べに行こうか」
ボギンスが促すと、マミルは布団から目だけ出して答えた。
「お姉ちゃん、怒ってる?」
「…怒ってないから、早く降りてきてよ。ご飯が冷めちゃう。今日は、私が作ったのに…」
やはり、最高の朝だった。
その頃、魔王国とトロス王国との国境付近では、男が剣を一本だけ持ち一人だけで佇んでいた。