幻想武闘伝!第0話「剥き出しの…」第1話「幻想郷に落ちた少女」

第0話 「剥き出しの…」

 私は一人なのかもしれない。
 小さい頃、私は一人になった。もう、お父さんの顔もお母さんの顔も覚えていない。
 周りの人たちは優しかったと思う。
 でも、私は、森にこもってしまった。
 一人にしてほしいと思ったんだ。
 一人で生きていると無性に涙が出た。
 朝起きて朝日を見た時、涙が出た。
 朝食で温かいものを飲んだ時、涙が出た。
 面白い発見をした時、涙が出た。
 一人で生きていると実感した時に
 誰かとこの感覚を共有したいと思った時に


 涙が出るんだ。

 一人、毎日食べ物を持ってきてくれる人がいたけど、
 毎回涙で迎えてしまっていた。
 一人になりたいけど、本当は一人にはなりたくなかったんだ。
 そんな、毎日を送っていた。
 だけど、そんな毎日の ある日
 あいつがきたんだ。

 その日は雨だった。


 あいつは、同い年くらいなのに、ませてて鼻についた。
 毎日、一人になりたい誰にも干渉したくないしされたくないと思っていたのに、ムカついたんだ。
 私は、一人になって初めて簡単に私の家に上がり込んできたあいつに怒ったんだ。
「お前ムカつく!」
 ってね。追い返すわけでもなく、ただ単に感情を言葉にしたんだ。
 あいつは、泣きながら怒る私に対して、バカなことをしやがった。
 私の目を見ながら、近づいてきて、私を抱きしめやがった。


 私は、一人になって初めて安心した。
 初めて、人の目を見た気がした。
 初めて、人に抱きしめてもらった気がした。
 初めて、だった。こんなイライラと、安心と、嬉しさを同時に感じたことは

 その日は、雨が止むまでと言いながら、あいつを泊めてやった。

 一緒に温かいものを食べて、
 一緒に話しておもしろくて、
 一緒に朝を迎えて朝日を浴びて、

 あいつが、帰ろうとした時、あいつが住むところを聞いた。
 その日は、あいつの家に初めて行った。

 あいつは、母さんがいた。

 あいつは、母さんにすごい笑顔を向けていた。
 私は、そんな姿を見てスカートの端を握っていた。

 そして、そして何も言わずに帰った。

 家に着くと、もう涙は出なかった。
 でも、心の中にポッカリ穴が空いたような感覚に気づいた。
 ああ、これだ。両親が亡くなった時、そして、一人になった時、毎日泣いていた時に感じた感覚が、今しっかりと理由わかった。
「私は、優しくして欲しかったんだ。そして、私も優しさを分けてあげたかったんだ。」
 次の日から、レイムの家に毎日行った。
 1日のほとんどは、レイムのそばにいるようにした。
 レイムは、1日の半分は、修行をしていた。
 私も、一緒に修行をさせてもらった。
 レイムのそばにいれるのなら、どんな苦痛も困難も笑って耐えれた。
 レイムの近くにいるだけで、本当に楽しかったんだ。
 そんな私をレイムは、バカだと言いながら、呆れていた。

 でも、少し嬉しそうだった。

 私は、こんな日がずっと続くとまた、思ってしまっていた。怠惰だった。努力を怠っていた。今なら分かる。
 幸せは、そんなに長くは続かない。大事なものは掴むだけじゃダメだ。握り締めて離さない努力をし続けなければ、すぐに零れ堕ちてしまう!…
 私が一番よくわかっているはずなのに…

「すいません!ちょっとそこのお嬢さん」
「なんですか?」
「ここら辺にある博麗神社というところに行きたいのですが…」

「ええ?!おまえ、人間だったのか?!」
「はい、そうなのです。人里の外に出られる自由を手に入れたかったので、化け物になりました。」
「へ〜、一人で?」
「ん?はい、一人でですが?」
「一人か…人里から離れると一人で寂しくないか?」
「それよりも、自由が欲しいのです。誰にも干渉されない自由が…ああ、でも、私は、誰にも迷惑はかけたくないので、博麗さんにご挨拶に行こうとしているのです」
「まあ、あんたが良いなら何も言うことはないよ。自由、頑張って!」
「はい!ありがとうございます!」
「お、着くよ。ここが博麗神社で〜す」

「レイム、お客さんだよ〜」
「マリサ、どいて…」
「レイム?…」
「初めまして、私はえきッ!」
「レイム!やめろ!」
「死ね」バシュ!
「なぜ?…私は、ただ…じ…ゆうお…」
 バタ…
「なんで殺した!そいつが誰かに迷惑かけたのか?そいつは、一人でいいから幸せにっ」
「まりさ!こいつは、掟を破った。それは、許されない。人里の人間は、化け物と対等じゃない。人間は、人間として、死ななければならないの」

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こぶし ぱんち

kobushipannchi.com

拳パンチと申します。 投稿については拙いものですが、読んで見ていただければ幸いです。 できれば、お友達にも紹介してくださいね。

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